PSTNとは?VoIPとの違い【わかりやすく解説】
PSTNとVoIPの基本的な仕組みや特徴、そして両者の違いをわかりやすく解説します。

この記事では、「PSTN」と「VoIP」という電話サービスについて、基本的な仕組みや特徴を端的かつわかりやすく解説します。
大きく違うようでいて、いざ説明するとなると少し難しく感じることもある両者ですが、なるべく専門用語をかみ砕いて説明するので、知識ゼロからでも理解できる内容となっています。
「PSTNとVoIPの違いって何?」と疑問を持っている方や、これから電話の導入を検討されている方の参考になるよう、短めに要点をまとめているので、短時間でポイントを抑えることができるはずです。

PSTNとは?
定義・正式名称
PSTNとは、『Public Switched Telephone Network』の略称で、日本語では「公衆交換電話網」。
これは一般加入電話や固定電話などと呼ばれる、昔から使われている電話回線の仕組みを指します。
自宅やオフィスに引かれている、いわゆる「黒電話」の時代から続く伝統的な電話サービス、といえばイメージしやすいでしょう。
また、1990年代以降、携帯電話(ケータイ)が急速に普及しましたが、携帯電話から発信される通話のうち、特定の電話番号にダイアルする音声通話の多くは、最終的にPSTNを経由して届けられる仕組みになっています。
🔸例
- 家庭やオフィスの固定電話
- 公衆電話
- 携帯電話事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)からの通話
仕組み
PSTNは、アナログ信号を電話回線(メタルケーブルなど)に流すことで通話を実現しています。家庭やオフィスの電話機は「加入者回線(ローカルループ)」と呼ばれる電話線(ケーブル)で最寄りの電話局に直接つながり、そこで交換機(電話局の設備)が各電話番号に応じて回線を振り分けます。
もし相手が遠方にいる場合でも、複数の交換機を経由して信号を中継することで、最終的に相手側の電話機まで音声が届きます。このように、交換機が「住所録」のような役割を果たし、どの番号につなげるかを判断しながらやり取りしているのです。

特徴
💡 長い歴史と広範なインフラ
長年かけて整備されてきたため、ほぼすべての地域で利用可能です。古い設備も含めて、世界的にインフラが整っています。また、停電などの非常時にも通話しやすいという特徴があります。
💡 安定した音声品質
交換機(電話局の設備)を介してアナログ回線で直接つながるので、インターネット回線の混雑の影響などを受けにくく、安定性の高い通話が可能です。
💡 比較的高い月額料金
回線を保つために管理費などが必要なので、月額の基本料金がインターネット電話(後述するVoIP)より高めになることがあります。また、通話料も距離や時間帯に応じて料金が加算されることが一般的なため、長時間電話や国際電話になると料金が高くなる傾向があります。
💡 導入の簡便性
利用するには、通信事業者(NTTや各地域の電話会社など)と契約を結び、電話回線を開設してもらう必要がありますが、家やオフィスに電話線が引いてある場合は、電話機をコンセントと電話線に挿すだけで使えるという手軽さがあります。
VoIPとは?
定義・正式名称
VoIP(ブイ オー アイピー、あるいはボイップやボイプとも呼ばれる)は、『Voice over Internet Protocol』の略称で、インターネット回線を利用して音声通話を行う技術を指します。
インターネット上でデータを相手に正しく届けるための住所とルールであるIP(Internet Protocol)を活用し、アナログ信号(音声)をデジタルデータに変換して送受信します。
🔸例
- ひかり電話
- LINE通話
- Skype
- Zoom
- Facebook Messengerでの通話
インターネット経由で通話できるサービスはすべてVoIPの一種です。パソコンやスマートフォンがあれば、アプリやブラウザを利用して手軽に音声・ビデオ通話が可能になります。
仕組み
前述の通り、VoIPは音声をデジタルデータ(パケット)に変換してインターネット上でやり取りする仕組みです。
具体的には、話し手の声をマイクが拾い、端末(パソコンやスマートフォンなど)でデータに圧縮・変換し、それらのパケットをネットワーク経由で相手の端末に送信します。
相手側の端末は受け取ったデータを再生可能な音声に復元し、受話器やスピーカーで出力します。これにより、専用のアナログ回線を必要とせず、インターネット回線さえあれば通話が可能になります。

特徴
💡 インターネット回線を使用
通話に利用するのは主に光回線やWi-Fi、モバイルデータ通信などのインターネット回線です。物理的な交換機を介さずデータ通信を使うため、設備がシンプルになりやすいのが特徴です。
💡 コストを抑えやすい
通信事業者によって異なりますが、インターネットさえあれば通話ができるため、固定電話と比べて通話料金や月額料金が安くなるケースが多いです。特に同じVoIPサービス同士(例えばLINEアプリ同士)であれば、データ容量は消費されますが、通常の通話料金は発生しないことが大きなメリットです。
💡 通信環境に左右されやすい
VoIPはデータ通信の速度や安定性に大きく影響されます。ネットワーク環境が不安定な場合や、回線速度が遅い場合には、通話音質の低下や遅延・途切れが発生しやすい点に注意が必要です。
💡 柔軟な機能拡張
インターネットを活用しているため、ビデオ会議や画面共有など、電話以外の機能と簡単に連携することも可能です。

PSTNとVoIPの主な違い
ここまで、PSTN(公衆交換電話網)とVoIP(Voice over IP)の仕組みや特徴をそれぞれ説明してきました。ここでは、両者をいくつかの観点から比較し、主な違いをわかりやすく整理していきます。

通信インフラ
📞 PSTN
アナログ回線を用いて、物理的な交換機を経由する仕組みです。長年使われてきたため、インフラが安定している一方、維持費や設備費などの負担が大きめです。
🌐 VoIP
インターネット回線(光回線やWi-Fiなど)を通じてデータとして音声をやり取りします。専用の交換機が不要な分、システム構成がシンプルで拡張性にも優れています。
音声品質・安定性
📞 PSTN
インターネットの混雑などの影響を受けにくく、安定した通話品質を保ちやすいのが特徴です。オフィスや自宅など固定された環境で電話を利用する場合には特にメリットがあります。
🌐 VoIP
ネットワークの速度や混雑状況に大きく左右されるため、回線状況が悪いと通話が途切れたり遅延が発生する可能性があります。ただし、回線環境が整っている場合は、PSTNに劣らない品質も期待できます。
コストと利用料金
📞 PSTN
設備コスト: PSTNでは物理的な交換機(従来の固定電話回線を相互につなげるための実際の機械設備)など、従来型の電話網を維持するための設備が必要です。利用者が直接負担するわけではありませんが、事業者の維持コストがサービス料金に反映される傾向にあります。
利用料金: 通常の電話料金として請求されるのが一般的です。地域や事業者によっては「かけ放題プラン」や「一定額での通話し放題オプション」なども存在します。
🌐 VoIP
設備コスト: 基本的にはインターネット回線があれば利用できるため、追加の設備が少なく済みます。自宅やオフィスで既にブロードバンド回線を契約していれば、新しく専用の電話回線を引く必要がないケースが多いです。
利用料金: インターネット上で音声データとして通信するため、「データ容量」として消費されることが一般的。専用のVoIPサービス(例:IP電話やアプリ)では、月額料金や通話料金、場合によっては定額プランなどが設定されています。また、同じVoIPサービス間の通話であれば通常の通話料金は発生しないことがほとんどです。
利用シーンとメリット・デメリット
PSTNの主な利用シーン
✅ オフィスや店舗など、安定した通話品質が求められる環境
✅ 大規模災害などに備えたバックアップとしての利用
✅ 既存の設備や電話機をそのまま使いたい場合
メリット:安定性や信頼性が高い・通話品質が確保しやすい
デメリット:コストが高め・配線や設備に制約がある

VoIPの主な利用シーン
✅ 外出時や知り合い同士での通話
✅ 海外との連絡や、リモートワークなど柔軟なコミュニケーションが必要な場合✅ 音声通話以外にもビデオ会議や画面共有などを活用したい場合
メリット:低コスト・様々な機能と連携が可能・場所を問わず利用しやすい
デメリット:回線状況に左右される・停電時や回線トラブルに弱い

まとめ
PSTN(公衆交換電話網)は、長年にわたって世界中で利用されてきたアナログ回線を用いる電話サービスで、安定した音声品質と信頼性が特徴です。一方、VoIP(Voice over IP)はインターネット回線を使って通話を行うため、コストを抑えながら柔軟な機能を活用できるメリットがあります。
📞 PSTN … 安定した音声品質、歴史的に確立されたインフラ。月額基本料金や通話料金はやや高めになりがち。
🌐 VoIP … インターネット環境を活用し、安価で機能拡張も容易。ただし回線状況に左右される側面がある。
それぞれに強み・弱みがあります。
利用場面やコスト面、回線の安定性などを考慮しながら、特徴を理解することで、環境やニーズに合わせた電話サービスのイメージがつかみやすくなるでしょう。